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1970年、私が2歳のころ、両親に連れられて大阪の万国博覧会に行った。
その時の光景は2歳の私にも鮮明に脳裏に焼き付いている。
人で溢れかえっている陸橋を渡る光景。
ショーケースの中に収められているパンダの切手を見ている光景。
おそらくそこは中国パビリオンだったのだろう。
すべて大人と同じ目線なので、母親にダッコかオンブをされていたのだろう。
そんな時代に、あの万国博覧会の象徴として「太陽の塔」を生み出した芸術家が岡本太郎だ。

岡本太郎は1911年生まれ、1996に亡くなるまで生涯にわたり創作にうちこんだ芸術家。
そして、そのエネルギーに満ちた生きざまから社会に大きな影響を与えている。
今回紹介する本は、その岡本太郎の著書。
岡本太郎が1979年から1981年にかけて週刊プレイボーイに連載した「にらめっこ問答」
という連載ものの人生相談の回答を編集したものだ。

次々と寄せられる若者からの悩みに真剣にズバッと答える岡本太郎流の回答は、
30年前とはいえ今の時代にも、若者だけでなく中年や高齢者にも心に響く内容になっている。

では、そのエッセンスを見てみよう

もっと「自分」をつらぬいてみないか
自分でやりたいことがあっても、ほとんどの人ができないでいる。
できないんじゃない自分でやらないと決めてしまっているんだ。
自分に能力があるかないかなんて、誰にもわからない。自分を賭けることで力が出てくる。
ぼくは毎朝毎朝、生まれ変わった気持ちで人生のはじまりだと思って人生を賭けている。

人間である以上、絶対観をもつべきなんだ。
賢かろうが賢くなかろうが貧しかろうが、さまざまなものを背負い込んだこの自分が宇宙全体であり、それを純粋につらぬくことが生きていること、存在である、という信念。
すべてのマイナスをプラスの面でつらぬけば、マイナスだを思っているものがプラスに転換するんだ。

ぼくは絶対に成功しないことを目的にしている。
人によく思われようとか、ホメられようと思うから人の目が気になる。それは自分の目だ。
人に好かれることなど問題にしないで自分のやるべきことをやれば、自分が燃え上がるんだよ。

どんなにつらくても、自分の「スジ」を守る。
一本「スジ」が通った人間は、自分をごまかしたり、時代にあわせて妥協したりしない。自分の生き方をつらぬくためには、他人の目なんかいっさい気にしない。
ぼくはなにものにも期待しない。
それが「スジ」だ。この瞬間瞬間に賭ける。将来なんて勝手にしろだ。

人生、即、夢!
人生とは自分のことだ。客観的に見た人生は、人生じゃない。
いちばん面白い人生とは、「苦しい人生に挑み、闘い、そして素晴らしく耐えること」
逆境にあればあるほど、おもしろい人生なんだ。

「すごい!」という感動が起爆剤だ
もしもこの世から「金」と「名誉」をすてたら人間はどうなるか。
人間の「生命」いのちが残る。
つまり人間のほんとうの存在だけが生きる。
金と名誉のない世界のほうが、人間はほんとうに生きられる。
計算ずくでやらない、結果をもとめないのが「無償」
自分が燃えあがることで世界全体が燃え上がるんだという絶対観が、無償であるということ。
自分という人間をその瞬間瞬間にぶつけていく。そしてしょっちゅう新しく生まれ変わっていく。
エネルギーを燃やせば燃やすほど、ぜんぜん別な世界観ができてくる。

「会社のなかの自分」ではなく「人生のなかの自分」を考える。
そして、人間としてのベストをつくすことによって、もっとひろがっていくこと以外にない。
勝って結構、負けて結構。
ただ、完全燃焼、全力をつくす。そういう主義をつらぬく。

なにかに全力をぶっつけて生きて行けばいいんだ。
そう決意し、むしろマイナスの面に賭けたほうが人生はおもしろくなる。

自分より条件のいい人を見てうらやましがったりするなんて、バカげてる。
自分に与えられた運命、自分が選んだ運命に絶対観で心身をぶっつけること。
それによって、本当に人間として充実した生き方ができる。
外から見たカッコーだけの条件にこだわっていたら永遠にむなしくなるだけだ。
腹を決めて生きて行くことだ。

キミも人間全体として生きてみないか

ぼくが人生で大切にしたいのは、「尊敬」よりも「感動」だ。
どんな人であっても、ある瞬間その人に感動すれば、それがぶつかり合いだ
ある点を尊敬するから、その人のどこもかしこも尊敬するなんて決め込むのはバカげてる。
だってね、よく考えてごらん。尊敬するってのは自分がするんだろ?
だったら、もっと自分を高めていけばいいじゃないか。
ぼくは尊敬する人をもつことは甘えだと思う。
自分がなにか困難に直面したとき、誰さんならこうしただろうと、自分が尊敬する人を引き合いに出して、その人がやったように真似てみたりする。これじゃ、自分の意志なんてないじゃないか。
まるっきり責任を転嫁しているだけだ。甘えだよ。
それよりも感動を大切にしろと僕はいいたいね。
感動というフレッシュな感情にふれるたびに、自分を再発見してそこからさらに高めていく。
この精神的飛躍がなければ生きている意味がないじゃないか。

下手でも自分自身の歌を歌えばいいんだ

ぼくは本質的には「芸術」はいわゆる職業であってはならないと思っている。
よく「あなたの職業は」とか「いったい何が本職ですか」と訊かれる。
そんなとき、ぼくは「本職は人間だ」って答えてやるんだ。
ぼくはあらゆることをやるけれど、職業じゃない。
人間として言いたいことを言う、やりたいことをやる。収入はそれについてくることがあるし、こないこともある。勝手にしやがれだ。

よく「感性をみがく」というけれど、この言葉はおかしい。
感性とは、誰にでも瞬間的に湧き起こるもの。完成だけを鋭くしてみがきたいと思ってもダメだね。
自分自身をいろいろな条件にぶっつけることによって、はじめて自分全体のなかに燃えあがり、ひろがるものが感性だ。

「生きること」ーーーつまり、全身をぶっつけて世界を感じること、
それがデザインとして具体化されなくても、全身をぶつけて世界を感じる生き方をすれば、
心のなかで夢のようなデザインが生まれてくる。

文化を創り出すには、型通りのものにおんぶしないで、ほんとうに自分が情熱を感じるものを探り出さなければいけない。たとえ自分が作り出さなくても、これこそと思うものは自分の責任で徹底的に支持する。そうすれば、それに共鳴する仲間も増えていくだろうし、そして互いに問題をぶつけあうと、新しい何かができてくるかもしれない。
作り出すことに年齢なんて関係ない。事実、文化には年齢差はないんだ。
だいたい、一番素晴らしい絵をかくのは4、5歳ぐらいのこどもだよ。
人の目なんか気にしないで無条件に自分をひらき。ぶっつけたい気分で絵を描くからだ。
そのうち成人してくると、他人の眼を意識するようになる。「ものの見方」なんて言って、
やたらに他人の方式にこだわる。その結果、自分を制御してしまう。
平気で自分をぶっつけていくことができなくなるんだな。
大人になっても平気で自分をぶっつけ、他を意識しないで描けばいい。
もしそういうものが何人かぶつかりあえば、それが社会的に広がっていく可能性がある。

キミ自身と闘って、どう勝つかだ

いちばん大切なことは、自分の敵は自分自身だということ。それを知るべきだ。
自分のスジをつらぬくことは、自分自身といかに闘い、勝つかってことだ。
自分に妥協したり、自分をごまかす、つまり自分を大事にしちゃって殺さない、他人を蹴落とすなんてことは一番卑しい生き方だ。
ごまかして生きて行こうとする自分と闘い、その自分を殺すんだ。

ぼくは耐えそして挑んでいるんだ。挑み、すなわち耐えている。
「挑む」と「攻撃」はちがう。
攻撃ってのは、なにかに対して仕掛けるんだろう。目標のない攻撃なんてありゃしない。
だが、「挑む」のは無目的だ。
自分自身で爆発している火山みたいに、無条件、無対象に吹き上がるのさ。
他よりもむしろ自分自身に対して挑むんだ。

挑戦する。勝利者でありたいと激しく熱望する。
しかしその勝利のために、ひとりの敗北者も生まれない勝利だ。

よく自分を凡人だというヤツがいるけど、それはうぬぼれだ。
自分を一般の水準並みだときめてしまって、いい気になっているんだよ。
凡人だという人に限って、人生に甘えている。惰性的な生き方をして自分を許している。
凡人であろうとなかろうと、自分は自分だと思えばいい。人生はだれでも孤独なんだ。
この広い世界にたった一人で生きている、というキビシさを自覚しなければダメだ。
凡人とか偉くなるなんて基準でものを考えることがまちがいなんだよ。
全力をあげて自分の命を活かせば、生きがいはでてくる。生きている手応えと喜びを感じる。
人間は、全体と一緒に生きていると同時に、孤独な、かけがえのない、たった一人の人間なんだってことを忘れちゃいけない。

多くの人が現在の惰性的な状況を自分自身に投影させて、むなしくなっている。
こういう生き方は無責任で不潔だ。
もし世界が変えられないとしても、変えることができるものがある。
自分自身だ。
多くの人が誠実に勇気をもって、平気で自分自身を変えていけば、絶望的に思われている世界の状況や、非人間的システムを変えることができる。
それには信念をもって本当のことを叫び、行動することだ。独自の彩で生命をかがやかすんだ。

人生は他人を負かすなんて、ケチくさい卑小なものじゃない。
いちばん大切なのは、自分自身に打ち勝って、自分の生きがいをつらぬくこと。
それがいちばん美しいことなんだよ。

自分の運命に楯を突け (青春文庫) [ 岡本太郎 ]
自分の運命に楯を突け (青春文庫) [ 岡本太郎 ]